マウスピース矯正はむし歯が多いとできない?根管治療済みの歯も動かした実症例を矯正認定医が解説
矯正コラム
2026.07.10
2026.07.10
「マウスピース矯正を始めたいけれど、むし歯が多いから断られるかもしれない」
そう感じて受診をためらう方は少なくありません。
この記事では、実際に虫歯が非常に多い方をマウスピース矯正で治療した症例を、院長の解説とともに紹介します。あわせて、マウスピース矯正でむし歯になりやすいと言われる理由、毎日の予防法、治療中にむし歯が見つかったときの対処、そしてむし歯が多い方に当院の治療がなぜ向いているのかまでをお伝えします。
まずは「むし歯が多くても治療できるのか」という疑問から、一つずつ見ていきましょう。
目次
【症例】むし歯が非常に多い方のマウスピース矯正

一般的な説明に入る前に、まずは当院で実際に行った治療をご覧ください。
出っ歯の改善を希望して来院された方で、奥歯を中心にむし歯と詰め物・被せ物が非常に多い状態でした。「これだけむし歯があると、マウスピース矯正は無理なのでは」と思われるかもしれません。
ここでは、その方がどのような状態だったのか、なぜ治療が可能と判断できたのか、そして「神経のない歯は動くのか」という疑問への院長の回答を順にお伝えします。
実際の経過とともに見ていくことで、むし歯が多い場合の治療の進め方が具体的に分かります。それぞれ次の項目で詳しく解説します。
出っ歯の改善を希望して来院|奥歯にむし歯と補綴物が多かったケース
来院されたのは18歳の女性で、口元が前に出ていることを気にされていました。

診断では、上の顎が前に出て下の顎が後ろに下がった状態で、上下の前歯の間が約10mm離れていました。あわせて上の歯列の幅が狭く、軽度の歯のがたつき、笑ったときに歯ぐきがやや多く見える状態も見られました。顎の骨には左右差もあり、手術を行わない矯正では完全には整えられない点を、治療を始める前にお伝えしています。

また、こちらの方は奥歯を中心にむし歯が非常に多く、詰め物や被せ物が多数入っていました。歯と歯の間にも詰め物が入っており、まさに「むし歯が多い方のマウスピース矯正」と言えるケースでした。
口元の突出(口ゴボ)が気になる方は、マウスピース矯正で口ゴボになる?原因と防ぎ方もあわせてご覧ください。
むし歯が多くても、検査と計画でマウスピース矯正は可能です
むし歯が多いと聞くと、矯正そのものをあきらめてしまう方もいらっしゃいます。しかし、むし歯の数が多いことが、そのままマウスピース矯正を受けられない理由になるわけではありません。
大切なのは、治療を始める前に口の中の状態をていねいに確認することです。
この方の場合も、むし歯や詰め物・被せ物の状態、それぞれの歯がこの先どれくらいもつかという見通しを確かめたうえで、治療計画を立てました。そのうえで、マウスピース矯正で進められると判断し、治療に入っています。
もちろん、むし歯や補綴物が多い分、治療には難しさもあります。難しい治療を実現するための具体的な工夫については、記事の後半であらためてお伝えします。
「むし歯で神経のなくなった歯は動くの?」根管治療済みの歯について
むし歯が進んで神経を取る治療(根管治療)を受けた歯がある方は、「神経のない歯は動かないのでは」と心配されることがあります。この症例の患者様も、右上・右下・左下の奥歯の3か所に、神経を取った歯がありました。
結論からお伝えすると、神経のない歯も問題なく動かせます。研究でも示されており、むしろ動きやすい場合もあるほどです。
むし歯の方の歯が動きにくくなる本当の要因は、神経の有無ではなく、被せ物や詰め物といった補綴物があるかどうかにあります。補綴物が入っている歯は、装置を歯に固定するための突起(アタッチメント)を付けにくく、その分だけ動かしにくくなります。神経があるかないかは、あまり関係がないのです。
つまり、むし歯が多く補綴物の多い口の中は、治療の難しさにつながります。この点をどう乗り越えたのかは、記事後半で具体的にご説明します。
そもそもむし歯があってもマウスピース矯正は始められる?

ここからは、むし歯が多い方全般に向けた基本的な考え方をお伝えします。
マウスピース矯正を始める前にむし歯が見つかった場合、多くは先にむし歯の治療を済ませてから矯正に入ります。装置を作ったあとに歯の形が変わると、その装置が合わなくなることがあるためです。そのため、治療を始める前の段階で、むし歯の有無や進み具合、詰め物・被せ物の状態をしっかり確認します。
ここで一つ知っておいていただきたいのは、むし歯が多いことが、そのままマウスピース矯正を受けられない理由にはならないという点です。むし歯の本数が多い場合でも、一本ずつ状態と予後を見極め、むし歯の治療と矯正の順番を計画してから進めれば、対応できることがあります。
当院では、院長と副院長がそれぞれ日本矯正歯科学会の認定医として在籍し、こうした難しいケースも多角的に検討しています。他院で対応が難しいと言われた歯並びについても、ご相談いただけます。
むし歯の多さが気になっていても、急いで結論を出す必要はありません。まずは当院の無料カウンセリングで、ご自身の口の中の状態を知ることから始めてみてください。
マウスピース矯正でむし歯になりやすいと言われる理由

マウスピース矯正はむし歯になりやすい、という話を聞いたことがあるかもしれません。
実際には、マウスピース矯正は、しっかりと自己管理ができればワイヤー矯正よりもむし歯になりにくい治療法です。ですが、管理が不十分な場合には、マウスピース矯正でも虫歯のリスクがあります。
むし歯のリスクが上がるのは、装置を長い時間つけて過ごすことで、口の中の環境が変わるためです。
装着中は唾液が歯に行き渡りにくくなる
口の中には、食べかすや細菌を洗い流し、溶けかけた歯を修復してくれる唾液の働きがあります。ところが、マウスピースを装着している間は、歯の表面が装置で覆われるため、この唾液の働きが歯に届きにくくなります。
1日のうち20時間ほど装着して過ごす治療では、歯が唾液に触れない時間がどうしても長くなります。その結果、汚れが残ったままの状態が続きやすく、むし歯のリスクが上がります。
とくに、磨き残しがある状態のまま装置をはめてしまうと、汚れと歯がぴったり接した時間が長くなります。これは、装置を外して過ごす歯と比べて、むし歯ができやすい条件と言えます。
だからこそ、装着前に汚れを落としておくことが、予防の第一歩になります。
マウスピース内に汚れや糖分が溜まりやすい
歯磨きをしないまま装置をはめたり、糖分を含む飲み物を飲んだまま装着したりすると、装置と歯の間に汚れや糖分が閉じ込められます。
たとえば、仕事の合間に甘いコーヒーを飲み、そのまま装置を戻してしまう場面を思い浮かべてみてください。このとき、糖分は装置の内側にとどまり、歯に触れ続けることになります。細菌はこの糖分を栄養にして酸をつくり、歯の表面を溶かしていきます。
装置でふたをした状態が続くと、酸が洗い流されにくく、むし歯が進みやすい環境になります。マウスピース矯正で虫歯を防ぐには、装置の中に糖分を持ち込まないことが大切です。
水以外を口にしたあとは、できるだけ早く歯を磨いてから装着する習慣をつくっていきましょう。
間食や飲み物の習慣がむし歯のリスクを高める
マウスピース矯正は、装置を外せばいつでも飲食できる手軽さがあります。一方で、この手軽さが、間食の回数を増やす一因になることもあります。食事や間食のたびに口の中は酸性に傾き、歯の表面が少しずつ溶けやすい状態になります。
本来は唾液がこれを中和してくれますが、飲食の回数が多いと、中和が追いつかない時間が増えていきます。そのうえで歯磨きをしない場面が重なると、むし歯のリスクはさらに高まります。
装置を外してすぐに何かを口にする習慣がある方は、一度その回数を見直してみてください。だらだらと食べ続けず、食べる時間と食べない時間にめりはりをつけることが、むし歯の予防につながります。回数を減らすだけでも、口の中が回復する時間を確保できます。
マウスピース矯正中にむし歯を防ぐための予防法

ここまでお伝えしたマウスピース矯正でむし歯になりやすいと言われる理由は、いずれも毎日の習慣で対策できるものです。実際にはしっかりと予防ができていれば、装置の着脱ができ、清潔を保ちやすい点から、マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも虫歯になりにくいです。
むずかしいことは必要なく、装置を外して飲食する、装着前に歯を磨く、装置を清潔に保つという基本を続けることが、むし歯の予防につながります。
ここでは、その具体的な方法をお伝えします。特別な道具がなくても始められ、マウスピース矯正とむし歯予防は無理なく両立できます。
飲食のときはマウスピースを外す
水以外のものを口にするときは、マウスピースを外すことを習慣にしましょう。
装置をつけたまま飲食すると、糖分や色素が装置の内側にとどまり、むし歯や着色の原因になります。お茶やコーヒー、スポーツドリンクなども、装置をつけたままでは控えたい飲み物です。
外した装置は、専用のケースに入れて乾燥や破損を防ぎます。ティッシュに包んで置くと、そのまま捨ててしまうこともあるため気をつけましょう。
飲食を終えたら、できるだけ早く歯を磨いてから装置を戻します。外出先で歯磨きがむずかしいときは、水で口をすすぐだけでも、糖分や汚れをある程度流せます。
装着前は歯磨きで口の中を清潔にする
装置をはめる前に歯を磨き、汚れを落としておくことは、むし歯予防の基本です。
磨き残しがある状態で装置をかぶせると、汚れと歯が長い時間ぴったり接してしまいます。歯の表面だけでなく、装置が触れる歯ぐきの近くまで意識して磨きましょう。鏡を見ながら、磨きにくい奥歯や歯の裏側にもブラシを当てていきます。
とくに、装置を固定するための突起であるアタッチメントの周りは、段差ができて汚れが残りやすい場所です。次に、このアタッチメント周辺のケアについて、もう少しくわしくお伝えします。
アタッチメント周辺は特に丁寧に磨く
アタッチメントは歯の表面に付いた小さな突起で、その周りには段差ができます。この段差に汚れがたまると、むし歯の起点になりやすくなります。
歯ブラシは、毛先をアタッチメントのきわに沿わせるように当て、小刻みに動かして汚れをかき出します。
一度で落としきれないときは、毛先の細い歯ブラシや、部分用のブラシを使うとよいでしょう。
アタッチメントの基本やよく外れる場合の対処は、インビザラインのアタッチメントがすぐ取れる原因と対処法でも解説しています。
フロス・歯間ブラシ・フッ素を取り入れる
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れまでは落としきれません。この部分はとくにむし歯ができやすく、むし歯が多い方ほど念入りなケアが必要です。1日に一度は、フロスや歯間ブラシを使って、歯の間の汚れを取り除きましょう。
慣れないうちは、寝る前の歯磨きとあわせて行うと続けやすくなります。
あわせて、フッ素入りの歯磨き粉を使うこともおすすめです。フッ素には、溶けかけた歯の表面を修復し、むし歯になりにくい状態を保つ働きがあります。歯科医院でのフッ素塗布を、定期的なチェックと一緒に受ける方法もあります。
マウスピース矯正中は唾液の働きが届きにくいぶん、こうしたケアが歯を守る助けになります。毎日の習慣として、無理のない範囲で取り入れてみてください。
マウスピース自体を清潔に保つ
歯をていねいに磨いても、装置に汚れや細菌が残っていては、それを清潔な歯に戻すことになってしまいます。装置は、外すたびに水ですすぎ、やわらかいブラシで内側の汚れを落としましょう。ぬめりが気になるときは、マウスピース用の洗浄剤を使うと清潔を保ちやすくなります。
注意したいのは、熱いお湯や歯磨き粉の使用です。熱で装置が変形したり、歯磨き粉の研磨剤で細かい傷がつき、そこに汚れがたまりやすくなったりすることがあります。
また、乾いた状態で放置すると、雑菌が繁殖しやすくなるため、保管の仕方にも気を配りましょう。
装置を清潔に保つことは、口の中の環境を整え、むし歯のリスクを下げることにつながります。毎日のすすぎと、定期的な洗浄を習慣にしていきましょう。
マウスピース矯正中にむし歯が見つかったらどうなるのか?

予防に気をつけていても、マウスピース矯正中に虫歯ができてしまうケースはあります。
こういったケースでは、むし歯の進み具合によって、対応の仕方は変わります。ここでは、むし歯が見つかったあとの流れを三つの段階でお伝えします。
まず検査でむし歯の進行度を確認する
むし歯が見つかると、矯正を中断しなければと不安になる方もいらっしゃいます。けれども、まず行うのは、検査でむし歯の進み具合と範囲を確かめることです。
ごく初期の虫歯であれば、削らずに経過を見ながら矯正を続けられる場合もありますし、むし歯が小さければすぐに削って修復することで、これまで通り矯正を続けられるケースも多いです。
一方で、ある程度進んでいるむし歯は、一時的に矯正治療をストップして治療するケースもあります。矯正治療を行っている最中に、矯正治療をストップしなければならないほど大きなむし歯が急激にできるということは、現実的には考えにくいです。
そのためこういったケースでは、矯正治療を始める前からむし歯はあったが、むし歯を見つけることができずに、そのまま徐々にむし歯が進行してしまった。ということが考えられます。具体的にはむし歯を削って被せ物をしなければならないようなケースでは、被せ物の治療が終わるまでの間、マウスピース矯正が進められません。また、被せ物の形がマウスピースと合わない場合は、矯正用のマウスピースをリファインメント(作り直し)する必要も出てきます。
そうならないためにも、矯正治療の開始前にむし歯を見つけるため、徹底的に検査を行いますが、どれだけ検査を行なってもレントゲンに映らないようなむし歯もあるため、絶対にむし歯が見つけられるとは言い切れません。
そのため、矯正治療の途中であっても、むし歯の兆候が感じられる(具体的には歯が痛かったり、黒い影が見えるというような)場合は、すぐに担当の歯科医師に連絡をして、むし歯の治療を行うことが大切です。
そうすることで、矯正治療をストップしなければならないような大きな治療になる前に、軽度な治療に留めることができる可能性があるからです。
むし歯治療と矯正の進め方を決める
むし歯の状態が分かったら、治療と矯正をどの順番で進めるかを決めていきます。
軽いむし歯であれば、矯正を続けながら治療を行えることがあります。痛みがあったりむし歯が進んでいたりする場合は、治療を先に行い、落ち着いてから矯正を再開します。状況によっては、応急の処置だけを行い、矯正の節目に合わせて本格的な治療を進める方法もあります。
どの進め方が合うかは、むし歯の場所や進み具合、矯正の段階によって変わります。一つの正解があるわけではなく、患者様ごとに相談しながら決めていくことになります。
マウスピース矯正は装置を取り外せるため、治療の際に処置を行いやすいという面もあります。不安な点があれば、遠慮なく歯科医師にお伝えください。納得して進めることが、無理のない治療につながります。
詰め物や被せ物で装置が合わなくなり、作り直しが必要になることがある
むし歯の治療で歯を削って詰め物や被せ物を入れると、歯の形がわずかに変わります。すると、それまで使っていたマウスピースが歯に合わなくなり、装置の作り直しが必要になることがあります。作り直しが起きると、新しい装置ができあがるまでのあいだ、治療が止まりやすくなります。この待ち時間が長いほど、矯正全体の期間にも影響します。
とくに、もともと詰め物や被せ物が多い方は、治療のたびに歯の形が変わる場面が増え、作り直しが起きやすくなります。つまり、作り直しにどれだけ早く対応できるかが、むし歯が多い方の治療の進み方を左右します。
の点について、当院ならではの対応を次でお伝えします。作り直しの負担を抑える工夫があることを知っておいていただければと思います。
むし歯が多い方のマウスピース矯正に当院のインハウスアライナーが向いている理由

ここまでお伝えしたように、詰め物や被せ物が多い方は、治療の途中で装置の作り直しが起きやすくなります。その負担を抑えられるのが、当院が用いるインハウスアライナーです。これは、マウスピース型の装置を院内で製作する仕組みで、作り直しに早く対応できることが特長です。
当院では院長と副院長がそれぞれ日本矯正歯科学会の認定医として在籍し、むし歯が多い方のような難しいケースも、インハウスアライナーなどさまざまな方法で、多角的に治療を検討しています。
ここでは、むし歯が多い方のマウスピース矯正にこの仕組みが向いている理由を、作り直しの起きやすさ、対応の早さ、装置の枚数という三つの点からお伝えします。それぞれを次から見ていきましょう。
むし歯が多いと装置の作り直しが起きやすい
詰め物や被せ物が多い口の中は、治療によって歯の形が変わる場面が増えます。古い詰め物を新しいものに替えたり、むし歯の治療で歯を削ったりするたびに、歯の表面の形がわずかに変化します。
マウスピースは、その歯の形に合わせて作られているため、形が変わると装置が合わなくなり、作り直しが必要になります。むし歯が一本だけの方と比べると、むし歯や補綴物が多い方は、こうした作り直しの場面が起こりやすくなります。
作り直しのたびに治療が止まると、矯正全体の期間も延びやすくなります。だからこそ、作り直しにどれだけ柔軟に、そして早く対応できるかが、むし歯が多い方にとっては大切になります。
インハウスアライナーなら作り直しが約1週間で完了する
一般的なマウスピース矯正で使われるインビザラインでは、装置の作り直しに通常1か月ほどかかります。海外で製作するため、できあがって手元に届くまでに時間が必要になるためです。
一方、当院のインハウスアライナーは、装置を院内で製作するため、作り直しを約1週間で行えます。作り直しは、矯正治療の中でほとんどの場合に起こる工程です。
インビザラインとインハウスアライナーでは、1回あたり約3週間の差が生まれ、それが何度か重なることで、治療期間の短縮につながります。
とくに、むし歯の治療で作り直しが起きやすい方ほど、この差が積み重なりやすくなります。待ち時間が短いぶん、治療の流れが止まりにくく、計画どおりに進めやすくなります。むし歯が多くても矯正を前に進めやすいことは、患者様の負担を軽くすることにもつながります。
枚数制限がないため治療計画の変更にも柔軟に対応できる
インビザラインには、あらかじめ決められた装置の枚数の範囲で治療を進める仕組みがあります。そのため、計画の変更が必要になったときに、枚数の制限が壁になることがあります。
当院のインハウスアライナーには、こうした枚数の制限がありません。むし歯の治療にともなって計画を見直したいときや、歯の動きに合わせて微調整したいときにも、柔軟に対応できます。
治療の終わりごろにわずかな後戻りが見られた場合でも、追加の装置で整えていけます。
後戻りについては、マウスピース矯正は後戻りしやすい?でくわしく解説しています。
なお、インハウスアライナーとインビザラインは、治療を始める前にどちらかを選んでいただきます。治療の途中での切り替えはできないため、最初のご相談でじっくり検討することをおすすめします。
【症例】むし歯が多い方ならではのマウスピース矯正の工夫

ここからは、前半で紹介した方の治療について、むし歯が多いからこそ生じた難しさと、それにどう対応したのかを院長の解説でお伝えします。
一般的な説明ではなく、実際の治療で行った判断をご覧いただくことで、むし歯が多い方の矯正がどのように進むのかが具体的に分かります。
ここでお伝えするのは、補綴物があると治療の難しさが増す理由、装置を固定するアタッチメントの工夫、そして将来を見すえた抜歯と親知らずの活用です。いずれも、むし歯や補綴物の多い口の中だからこそ必要になった工夫です。
それぞれを次から見ていきましょう。
補綴物があると、なぜ治療の難易度が上がるのか

さきほどお伝えしたとおり、歯が動きにくくなる要因は、神経の有無ではなく補綴物の有無にあります。被せ物や詰め物が入っている歯は、表面がつるりとしていて、装置を固定するための突起であるアタッチメントを付けにくくなります。アタッチメントが付けられないと、その歯に矯正の力を伝えにくく、思うように動かせないことがあります。
今回の方のように、奥歯を中心に補綴物が多い場合、こうした歯が複数あることになります。そのぶん、一本ずつ動かし方を考える必要があり、治療の難しさは増します。それでも、付ける位置や角度を工夫することで、補綴物がある歯にも対応できます。次に、この方に行ったアタッチメントの具体的な工夫をお伝えします。
右下6番は付けず、6番は斜めに|アタッチメントの工夫

この方の治療では、補綴物のある右下の奥歯(6番)に、あえてアタッチメントを付けない判断をしました。
被せ物の表面ではアタッチメントが外れやすく、付けても役割を果たしにくいためです。一方で、別の歯に付けたアタッチメントには、角度の工夫を加えています。
前歯を後退させる過程では、奥歯が前方へ傾きやすくなります。そこで、その傾きに対抗できるよう、アタッチメントを斜めに設置しました。こうすることで、奥歯の位置を保ちながら、前歯を計画どおりに動かしていけます。
同じアタッチメントでも、どの歯に、どの向きで付けるかは、一本ずつ変えていきます。むし歯や補綴物が多い方の矯正では、こうした細かな調整の積み重ねが、仕上がりを左右します。
予後を見据えた抜歯と、親知らずを活かす治療設計

この方は、むし歯の影響もあり、右上の奥歯(6番・7番)が将来的に長くもたないと見込まれました。まだお若いことを考えると、無理に残すよりも、先を見すえた判断が必要でした。
そこで、矯正で一般的に抜歯の対象となる上の4番に加え、右上の7番もあわせて抜くことにしました。7番を抜いておくと、その位置へ、これから生えてくる見込みのある右上の親知らず(8番)を誘導して、親知らずを7番の代わりにすることができます。
親知らずを活かすこの方法は、難しさがあるため、広く行われているわけではありません。一本でも多く、長く使える歯を残すための当院独自の治療設計です。
まとめ:むし歯が多くても、マウスピース矯正をあきらめなくて大丈夫

マウスピース矯正でむし歯になりやすいと言われるのは、装置そのものが原因ではなく、装着中に唾液の働きが届きにくくなることが要因です。
装置を外して飲食する、装着前に歯を磨く、フロスやフッ素を取り入れる、装置を清潔に保つという基本を続けることで、むし歯のリスクは下げられます。むし歯が多い方でも、治療を始める前にていねいに検査し、計画を立てて進めれば、マウスピース矯正で治療できることがあります。
今回ご紹介したように、神経のない歯も動かせますし、補綴物がある歯にもアタッチメントの工夫で対応できます。
当院では、インハウスアライナーによる作り直しの早さや、予後を見すえた抜歯の判断で、むし歯が多い方の矯正にも取り組んでいます。むし歯の多さや口元の悩みが気になっていても、急いで結論を出す必要はありません。まずは今の歯の状態を知ることから始めてみませんか。ぜひ当院の無料カウンセリングをご利用いただければと思います。
監修歯科医師
小田垣 直弥
院長
マウスピース矯正や裏側矯正、口ゴボの改善などの難症例を得意としています。矯正歯科医として、患者様一人ひとりの骨格や顔立ちに合わせた治療を心がけています。特に、見た目にこだわる大人の方には「見た目に矯正中だとわかりにくく、仕上がりにも妥協しない治療」を大切に、日本矯正歯科学会認定医として丁寧な診断とご提案を行っています。
マウスピース矯正や裏側矯正、口ゴボの改善などの難症例を得意としています。矯正歯科医として、患者様一人ひとりの骨格や顔立ちに合わせた治療を心がけています。特に、見た目にこだわる大人の方には「見た目に矯正中だとわかりにくく、仕上がりにも妥協しない治療」を大切に、日本矯正歯科学会認定医として丁寧な診断とご提案を行っています。


